春から新緑へ

今年の春は、例年より1週間から10日程早く訪れ、本町が誇る桜の公園「上米公園」も夜桜まつりの照明が間に合わない状況でした。そして、例年ならば、桜吹雪の入学式が、卒業式を祝う桜となりました。3月後半から4月末までの間には本町の春祭りとして、夜桜まつり、つつじまつり、しゃくなげ花まつり、そして、早馬(はやま)まつりといった祭りが開催され、町内外から多くの人が訪れ賑わいました。このような人の交流や行き来が、町の活力や人々の生気を生むのだと感じたところです。
 
早馬まつりは、都城北諸管内を代表する祭りの一つで、明治の初め、地頭三島通庸(みしまみちつね)公が、三股郷の開拓にあたって山王原(さんのうばる)の地を行政の府と定めるとともに、「早馬神社」の社殿を造り、この地の守る神(産土神)を遷宮したとあります。この後、人心の統一や牛馬・人の無病息災、五穀豊穣などを祈願する祭りとして盛大になったようです。今年も、ジャンカン馬踊りを筆頭に棒踊り、奴踊りなどの郷土芸能の披露や子ども神輿、町内の踊り・演奏、中学校吹奏楽、ローカルヒーロー「ミマタレンジャー」などの催しで盛り上がった祭りでした。また、剣道、柔道、弓道、四半的の各大会が奉納大会として協賛し、町中が祭り一色となりました。
 
この時期は別れと出会いの季節です。本町には、町立小中7校、私立高1校があります。卒業式は、別れの寂しさと新世界への希望が混在した厳粛な式典ですね。入学式は、未知の世界の扉を開く不安と期待が表情に伺える、ちょっと和やかな式典だと感じました。どの卒・入学式とも工夫が伺え配慮された式典でした。また3月末からの日曜日には、各集落で例年通り春祈念として住民の方の交流会が催され、11集落を訪問させていただきました。日時が重なり、親交する時間が限られ残念なところもありましたが、それぞれ楽しく愉快に、そして一工夫された催しに、多くの皆さんが参加され交流されている様子を拝見でき、地域のつながりの大切さを再認識するとともに明日への英気を頂きました。
 
昨今、TPPや道州制問題など地方に係る問題が脚光を浴びています。道州制問題は、県を廃止し、県の事務を基礎自治体が引き受け、国の役割を特定の分野に限定することで、国・県・自治体の三階層構造から道州と基礎自治体の二階層構造へと移行するものです。道州制で行政のスリム化、効率化、スピード化を図り、機動的な経営主体としてグローバル化した国際社会に対応できる制度と位置付けられています。しかし、平成の大合併が一段落し、合併の検証がされつつある中、中心部と周辺部との格差、コミュニティの希薄化、地域伝統文化の衰退など検討すべき課題も多々あり、同様のことが、道州制でも懸念されるところです。地域には、地域固有の伝統文化があり、人の繋がりを介して育まれています。小さい(自治体)からこそ、よく見えて、問題を共有化でき、一緒に解を求める努力ができます。道州制は、人々の暮らし、地域のあり方に大きな変化をもたらしますが、十分に議論されてない、周知されていない状況です。
 
わが町は、合併しなかった人口2万5千人の小さな自治体です。見える行政を掲げ、風光明媚な自然、農地を守り、歴史、伝統文化を繋ぎ、持続可能な行財政運営を目指しています。地方・地域の活性化があってこそ、国の繁栄があります。道州制は、本当に地方・地域の活性化に寄与するのでしょうか。国と道州の仕事の分担、国の出先機関のあり方、基礎自治体の財源、県の事務を承継できない自治体の補完体制などなど分からない点が多々あります。拙速に走らないで、大いなる議論を待ちたいと思います。TPPはもっと深刻です。農業に限らず、日本らしさが壊れるのではないかと危惧します。選択肢は他にないのでしょうか。いずれにせよ、日本全国津々浦々に人々がいて、元気で生き生きと住める社会を期待しています。

平成25年5月9日
三股町長 木佐貫辰生

このページに関するお問合せ先